データ復旧:トップ > いまさら聞けないパソコン基礎知識 > SDカードやUSBメモリの容量偽装について
Aさんは海外旅行に備えて、写真や動画をたくさん撮影できるように256GBのSDカードを購入することにしました。
最初は家電量販店に買いに行きましたが256GBのカードは予算オーバーで買うことができず、帰宅後にネット通販で半額以下の店舗を見つけ、大喜びで購入します。
数日後、届いたSDカードで試し撮りをして問題がないことを確認してAさんは旅行に出かけます。
旅行を満喫し、パソコンにデータを取り込んだところ、旅行3日目以降のデータがすべて破損していました。
Aさんはデータ復旧会社にデータの救出を依頼しましたが「容量偽装品のため、先頭の16GB以降のデータは記録されておらず復旧不可」という結果に終わりました。
Aさんのケースのように、試し撮りでは問題なかったのに、撮影を続けていると異常動作をするのは「容量偽装メモリ」であることが多く見受けられます。最近、こういった容量偽装メモリが多く出回るようになっています。
SDカードやUSBメモリの中には「フラッシュメモリ」と呼ばれる記録チップが搭載されていて、このフラッシュメモリの中にデータを記録します。
フラッシュメモリには容量の上限があり、256GBのメモリには256GB分の、16GBのメモリには16GB分のデータが記録可能です。16GBのメモリに20GBのデータを入れることはできません。
フラッシュメモリは、容量が大きければ大きいほど製造コストがかかり、高価になります。
容量偽装メモリは、この容量を偽ったメモリです。
たとえば冒頭のAさんが購入してしまったSDカードは「16GBのフラッシュメモリを搭載しているのに256GBに偽装したSDカード」ということになります。
パソコンやデジカメにSDカードを接続すると、使用容量と全体の容量が表示されるので、その数値を見れば簡単に容量偽装メモリを見抜くことができそうに思えます。
しかし、容量偽装メモリは単にパッケージやラベルに偽の容量を書いているだけではなく、もっと巧妙な偽装が施されています。
ファームウェア内にある「搭載されているメモリ容量」の情報が書き込まれている部分に偽の情報が上書きされているのです。そのため、16GBのSDカードなのに、パソコンやデジカメ上では256GBのSDカードとして認識してしまいます。
また、先頭の16GB部分は正常に動作するので、試し撮りをしても気づくことができません。
偽装方法は複数ありますが、本来の容量を超えて書き込みをした場合には、何らかの異常が発生します。
「書き込みができたように見せかけて、実際には書きこまない」「16GB部分に繰り返し書き込みをする」といったパターンがあります。
データレスキューセンターでも容量偽装と思われるメモリカードからのデータ復旧のご依頼を受けることがありますが、本来のメモリ容量以上のデータはそもそも記録がされていないので、基本的にデータの復元は不可能です。
容量偽装メモリは、実在する世界的に有名なメモリメーカーのパッケージをコピーして作られています。
粗悪な部品と、容量の小さなフラッシュメモリで安価に製造して、有名メーカーの大容量メモリとして高く販売する悪質な偽ブランド品です。
正規品と見比べると、パッケージの印刷が粗い、フォントが異なる、バーコードが異なるなどの違いがあります。
ひどいものだと128GBのSDカードに「SDHC」のロゴがプリントされているものもあります。SDカードの規格上、「SDHC」は32GBまでで、64GB以上のカードは「SDXC」という別の規格なので「128GBのSDHCカード」は存在しません。
SD | SDHC | SDXC | SDUC | |
---|---|---|---|---|
容量 | ~2GB | 2GB超~32GB | 32GB超~2TB | 2TB超~128TB |
ロゴ |
こちらは容量偽装の256GBのmicroSDカードと、正規品の64GBのmicroSDカードです。
実際に現物を見比べないと違いが分かりませんが、よく見ると印刷の品質が異なり、ロゴも若干違います。
拡大してみると、偽装品は印刷が粗いことが分かります。
また、容量を確認したところ、256GBのカードは、268,435,456,000バイトとなっていました。
一般的な256GBのカードは256,000,000,000バイト程度のものが多く、この数字は大きすぎます。
データ容量はチップごとの個体差があるため、容量がキリのいい数字になることはまずありません。しかし、このカードは256バイト×1000×1024×1024の計算値と一致する容量になっていて、人為的に容量の数字を操作していることが分かります。
しかし、こういった見分け方は知識がない方には難しいでしょう。
ロゴなどの比較は実際に製品を手にとって見られるようなお店でないと取れない手法ですし、このような出所が怪しい製品は一般の店舗では取扱がされておらず、インターネット上の通販サイトで販売されるケースが殆どになります。
しかし前述のとおり、メモリカードの偽装品の場合は、一見する限りでは正規品とそっくりで、実容量の限界がくる数百枚、数千枚程度の写真撮影をするまでは正常に動作するので、実際は偽装品であることが発覚するまでに非常に時間がかかります。そのため通常行われているような口コミや評判などを参考にして出品者や製品に問題がないことを判断するという手法が通用しにくいのです。
そのため重要なのは、SDカードやmicroSDカード、USBメモリの販売価格の一般的な相場というのをきちんと確認することです。一般価格よりもはるかに安く、この値段で採算がとれるのと思わず心配が先に立つような製品は、メモリカードに限らず手を出さない方が無難になります。
もちろん何らかの事情により相場よりはるかに安く売られるケースもあります。その場合でも納得がいく理由があるかどうかを確認しましょう。
特に大容量のSDカードやmicroSDカード、USBメモリなどは偽装品の存在を念頭におきながら、十分に注意してご購入ください。