データ復旧:トップ > いまさら聞けないパソコン基礎知識 > GPSについて
スマートフォンで地図を開いた際に、現在位置が分かるようになっています。今となっては当たり前の機能ですが、これはどのようにして現在位置を特定しているのでしょうか。
GPS(Global Positioning System)と呼ばれる測位システムがスマートフォンに搭載されていて、人工衛星から受信する信号を使って現在位置を特定できる仕組みになっています。
さらに正確いうと、人工衛星を使った測位システムは「衛星測位システム」が正しい名称で、アメリカが運用するGPSは、世界各国でいくつか運用されている衛星測位システムの中の一つにすぎません。
元々軍事用のシステムだったGPSは、地球を周回する多数の人工衛星からの信号を受信して、その情報をもとに現在位置を割り出す仕組みになっています。現在、約30機のGPS用の人工衛星が軌道上に存在し、各衛星が正確な現在位置の情報と現在時刻を常に発信しています。GPSを利用する機器は、複数の衛星から信号をキャッチして発信時刻の差からそれぞれの衛星と現在位置との距離をもとに、すべての衛星からの距離が合致する1点を現在位置として特定することができます。緯度、経度、高度、時刻の4要素を割り出すために、最低4つの信号を同時に受信する必要があり、信号が受信できる衛星が少ないと、現在位置のずれが大きくなります。
GPSはもともとアメリカの軍事用として1973年に開発された測位システムで、1978年には衛星の打ち上げを開始して試験運用を始め、90年代に本格運用となっています。
仕組み上、信号を受信できればだれでも正確な位置情報を得られることから、他国やテロリストが利用するのを防ぐ目的で、当初は意図的に誤差データを含めていて、精度は半径100m程度でしか利用できませんでした。
その後、2000年になってから誤差データが排除されて民間利用に解放されています。
1983年に大韓航空機が飛行ルートを誤りソ連の領空侵犯をして撃墜された事件が、一般向けGPSの民間利用解放のきっかけになったと言われ、その後は航空機の航行システムにGPSが組み込まれるようになっています。
GPSはアメリカが運用する衛星測位システムですが、他の国でも同じような仕組みの衛星測位システムが運用されています。複数のシステムの信号を受信することで測位の精度をさらに高めることが可能です。
ロシアにより1982年から衛星が打ち上げられ、1996年には運用開始されたシステムですが、ロシア経済の悪化により機能を失っている時期があり、インド政府の協力を得て2011年には全世界をカバーできるようになっています。
一般向けの利用としては、iPhone 4SからGLONASSの信号を受信できるようになり、GPSだけを利用していたころよりも測位精度が高くなっています。
EU、ヨーロッパ連合が運用するガリレオは、GPSやGLONASSとは違い、軍ではなく、民間企業の出資で構築されています。まだ衛星の数が不足していて初期サービス段階ですが、2020年には本格運用予定となっています。
誤差1m程度の無料サービスと、数cmレベルの高精度の有料サービスが予定されています。
他の衛星測位システムは、地球全体を円軌道で回る多くの衛星を利用していますが、日本が運用する準天頂衛星システム(QZSS)は、準天頂軌道という特殊な軌道の衛星を利用します。準天頂軌道は、日本の真上を通る8の字型の動きをしていて、少ない数でも日本の上空をカバーし続けるようになっています。
円軌道と比べて垂直に近い位置に長くとどまるので、ビル街でも屋根のない場所であれば信号を受信しやすいという特徴があります。2023年に本格運用が開始されれば、多くの衛星をとらえられるようになって、誤差が小さくなり測位精度を向上させることが期待されます。
AはAssisted (補助されている)の略で「GPSを他のもので補助するシステム」を意味し、携帯電話で利用可能です。衛星から受信する信号ではなく、どの基地局に接続されているかをもとに、大まかな位置を特定します。精度は低いものの、GPS信号よりも高速に位置が特定でき、室内でも使えることから、多くの携帯電話では通常のGPSとA-GPSが併用されています。地図アプリを開いて最初は少しずれた場所が表示されてしばらく待つと正確な位置が特定されるのも、A-GPSで大まかに特定した後で衛星からの信号で正確な位置を割り出す仕組みになっているからです。
人工衛星を使わない測位システムとしては、Wi-Fiのアクセスポイントをもとにして位置情報を特定するシステムなどもあります。
GPSの利用例として代表的なものはカーナビですが、車以外にも航空機、船舶、自転車、徒歩のナビゲーションとして利用されています。サイクリングやジョギングの際にコースや走行距離を記録することも可能です。
珍しいところでは、大規模農園で農業機械にGPSを取り付けて、農薬や肥料散布の際に、敷地内で重複や抜けがないように自動化するシステムがあります。
お子様向けのGPS付き携帯端末のほかに、盗難対策として高価な機器にGPS機能を取り付けて、盗難された際に場所を特定できるシステムがあります。一部の建築・土木機械にはGPSで位置情報が特定できるだけではなく、故障が発生した際に販売元に情報が届くようにしているものもあります。
誤解されることが多いですが、GPSは信号を受信して位置を特定するだけなので単体では防犯機能として意味をなさず、位置情報を所有者に発信するための通信機能も搭載する必要があります。
携帯電話で写真を撮影した際に位置情報を写真に埋め込むことができます。あとで撮影場所を確認できたり、SNSに写真を載せた際に撮影地情報を表示させたりすることもできます。
デジタルカメラでもGPS機能が付いたものが発売されています。また、GPSロガーという装置を持ち歩いていれば、時刻ごとの位置情報のログを残せるので、GPS機能がないデジカメで撮影した写真をパソコンに取り込む際にログの情報をもとに撮影地情報を後付することが可能です。
GPSの位置情報のデータは撮影日時情報などと同じくEXIFというフォーマットで写真データに書き込まれます。最近のSNSでは、写真のアップロード時に位置情報を意図的に付加するように指定しない限り、EXIF情報は削除されますが、消さずにネットに公開した場合は悪意のある人に撮影場所を特定されることもあるので注意が必要です。
交通事故が起きた際の証拠として役に立つドライブレコーダーにもGPSを搭載したモデルがあります。事故の発生現場の位置情報を記録するだけではなく、速度の記録も可能なので、証拠能力が高くなります。
ドライブレコーダーのGPS情報は、動画データとは別にログファイルとして記録メディアに位置情報のデータが蓄積されることが多いです。
位置情報を利用して実際の地図と同じ場所に移動して遊ぶゲームとしてポケモンGOが有名ですが、ほかにも多くのゲームで位置情報が使用されています。
弊社では、位置情報を含むEXIF情報を残したままでの写真や動画のデータ復旧はもちろん、突然認識しなくなったドライブレコーダーのSDカードのデータ復旧や、GPSロガーのデータ消失などにも対応しています。突然のデータ消失などでデータ取り出しが必要な場合は弊社にご相談ください。
●データ復旧事例(SDカード)
https://www.rescue-center.jp/case/mc.html
●メディア解説(SDカード)
https://www.rescue-center.jp/explanation/sd/