1991年に市場に登場したSSD(Solid State Drive)。それまでの記憶用ストレージの主役だったHDD(Hard Disk Drive)と比較すると、高コストではあるものの、高速で低電力、動作機構がないのでコンパクトで静音、発熱も少なく衝撃にも強いなどのメリットは大きく、2015年~2017年ころにはHDDから世代交代をしたと見られています。
しかし新しい規格であるため、mSATA、NGFF、M.2、PCIe、AHCI、NVMeなどの初心者には敷居の高い専門用語も多く、混同されることもあるようです。
SSDとその周辺用語についてまとめて解説するので、SSDやその付属機器の購入や買い替えの際の参考に役立ててください。
インターフェースとは、元々は物事の境界や接点を意味する英単語です。転じてIT用語としては、コンピューターや機械同士のハードウェア・物理的な接点、あるいはプログラムやプロトコル等のソフトウェア・論理的なつなぎのことを示します。
広い概念を持つため一口に説明するのが難しいですが、一般レベルではパソコンと周辺機器をつなぐ端子やケーブルのことを指すことが多いです。USBやSATAがその典型になります。
HDDとパソコンをつなぐ物理的なインターフェースとしては、ATA/IDEを改良したSATAが長らく使われてきました。SSDも出始めのころは同じくSATAを利用するのが大半でした。既存のパソコンの内蔵ストレージはHDDが前提だったため、インターフェースの互換性を保つためSSDも2.5インチのHDDのサイズを模したカートリッジ式が主流で、従来のSATA用のケーブルを利用してパソコンと接続していました。
その後SATAは改良が重ねられることで転送速度が6Gbbsまで向上しています。その過程でSATA向けの論理インターフェースであるAHCI(Advanced Host Controller Interface)が策定され、ATA/IDE時代から使用されてきた仕組みも大きく改善されています。
物理インターフェースがモノや機械であるのに対して、論理インターフェースはプログラムやルールを定めたものになります。例えば駅の改札口が物理インターフェースなら、論理インターフェースは、改札口の数や出入口の向きや、切符チェックの手続きや運賃不足の場合の対応などのルールになり、このルールは駅の規模や特性に応じて最適なものも変わります。
AHCIはあくまでもHDD向けとして策定されていたため、SSDに対しての限界はすぐに訪れることになります。
SSDも同様に進化を続けていきます。SSDは当初の時代からHDDの数倍の読み書きの速度があるとされていましたが、2014年頃にはついにSATAの転送速度をも上回るようになります。
これは例えば電車の速度や運送人数が増加しても、改札口の処理能力が低いままではそこで渋滞が起きてしまい、結果的な運送能力に変わりはでないというような状態です。そこでSSDの進化にあわせてインターフェースの改良が求められるようになりました。
まずSATAの接続コネクタはどうしても場所を大きくとるため、コンパクトなSSDのメリットを生かしきれないという難点がありました。そこでSATAのコネクタ部分の形状のみを薄く平たいものにかえたmSATA(miniSATA)が2013年に登場します。SATAケーブルは不要になり、SSDはマザーボード上のmSATAの専用ソケットに直接接続されるようになります。これにより小型PC、薄型ノートPCが低コストで作られるようになりました。
同時期に1.8インチサイズ用のMicroSATAというものもありました。これはmSATAとは別物になります。
このmSATAの後継としてNGFF(Next Generation Form Factor)を経て、M.2というフォームファクタが定められました。mSATAと同様に専用のソケットで取り付けられますが、mSATAとは互換性はありません。
現在のSSDはM.2が主流のため、mSATAはひと昔前の小型・薄型のパソコンでしか見ることはないですが、NGFFは旧名称としてM.2(NGFF)のように並列で表記されることがあります。通常はNGFFと記載があればM.2のことと判断しても問題はありません。
あわせて論理インターフェースも改良され、フラッシュストレージ向けのNVMe(Non-Volatile Memory Express)も策定されました。大きな特徴としては、キューの数がAHCIの1個に対して65,536個に拡張されたため、同時に大量の処理するような作業の際に性能を発揮しやすくなりました。
SSDは読み書きが非常に高速と言われていますが、条件や状況にもよるところがあるので注意が必要です。
速いSSDというと、通常はNVMeに対応したSSDのことを指します。しかしSSDの速度を実測すると、OSや大型アプリケーションを起動する際にはHDDの2倍近いタイムが出ますが、SATA-SSD(AHCI)とPCIe-SSD(NVMe)の間ではそう大きな差はでません。これはNVMeが連続した読み込み(シーケンシャルアクセス)は得意でも、断片化した領域への読み込み(ランダムアクセス)は不得意であり、また初期化コストが(AHCIに比べて)高いという特徴もあるためです。
ただし一気に読み書きをする動作、例えば数GB以上の大きなファイルの転送などは圧倒的に差がでます。計測方法にもよりますが、PCIe-SSD(NVMe)接続でならHDDの10倍、SSD(AHCI)の3倍程度の速度差がでることがあります。
M.2はあくまでも物理的寸法などを定義したフォームファクタのため、M.2のSSDであるというだけではまだどういう物理インターフェースを持っているかは決まりません。
M.2の接続規格には、PCIe(PCI- Express)、SATA3.0、USB3.0などが幅広く採用されているため、同じM.2でも通信向けやストレージ向けなどに特化させることが可能です。その反面、端子の切れ目の位置が異なるだけでスロットのサイズが同じなので、接続はできるけども認識されない、接続できそうで嵌らないということが起こりやすい規格になります。
初期タイプのM.2-SSDは切れ目で大体の規格の判別をつけることが可能だったのですが、切れ目に関しては自由度が高い規格のため、メーカーによって独自の設計がされるようになり、現在では端子の形状だけをみても判別がつかないようになっています。
また従来のSATA-SSD(AHCI)と、より高速になったPCIe-SSD(NVMe)だけでなく、過渡期にはこの中間のPCIe-SSD(AHCI)も存在していたことがあったため、混乱しやすい状態になっています。
例えばカタログにAHCIには対応していないとあっても、それは「PCIe-SSD(AHCI)」には対応していないという意味だったのに、「SATA-SSD(AHCI)」では使えないという勘違いを生んでいたなどです。
SSDの買い替えやSSDへの載せ替え、あるいは手持ちSSDを外付けストレージ化などする際に、最初に確認すべきなのはまずNVMeやACHIの対応についてです。スロットやアダプタが両方ともに対応していることもあれば、片方だけしかしていないこともよくあるので、手持ちの機器を利用する場合はよく確認をしましょう。
また高性能なNVMe対応のSSDですが、コストが高く、発熱が大きいなどのデメリットもあります。そのためNVMeを敢えて選ぶべきなのかも検討する必要があります。
例えば動画編集や3Dゲームをよくする方でしたらその恩恵は受けやすいのでお勧めできます。インターネット閲覧がメインですでにAHCI対応SSDを使っているという場合などでしたら敢えて交換するほどでもないでしょう。
ほかにSSDでもまれに非常に低価格で販売されているケースもありますが、そういった場合は、セルのタイプに格安なものが使われている可能性が高く、耐久性などに不安が残るので注意が必要です。事前に相場をよく確認しておきましょう。
データレスキューセンターでは、起動できなくなったSSD搭載のパソコンや、認識できなくなった外付けSSDのデータ復旧、復元に対応していますので、もしものトラブルの際にはお気軽にご相談ください。