ドライブレターという言葉をご存知でしょうか。
PCの「コンピューター」を開くと、「ローカルディスク(C:)」や「DVDドライブ(D:)」といった表示があります。この「C」や「D」の文字をドライブレターといいます。
ドライブはハードディスクドライブやDVDドライブなどの読み取り装置のことで、レターは文字のことです。ドライブレターはその名の通り「ドライブに割り当てられた文字」を意味します。
ドライブレターは、PCに接続されているハードディスク、USBメモリなどのドライブや、パーティションと呼ばれる領域を区別するために使用されます。一般的なPCでは「Cドライブ」がPCを動かすためのOS(オペレーティングシステム)の入ったドライブになっており、データ保存領域として「Dドライブ」が存在するものもあります。また、CDやDVD、ブルーレイディスク用のドライブが「Dドライブ」や「Eドライブ」になっていることも多いです。
さらに、USBメモリやSDカードをPCに接続すると別のドライブレターが自動的に振り分けられます。基本的に使用されていないアルファベットが先頭から順に使用されるので、同じUSBメモリでも接続時の状況でドライブレターが変化します。
ユーザーが自分でドライブレターを変更することもできます。
ドライブレターと現在のドライブの状態は、「コンピューターの管理」で確認できます。「コンピューター」を右クリックして出てくるメニューの中の「管理」を開き、「ディスクの管理」を選択すると、現在どれだけのドライブが接続されているか、ドライブレターは何が割り当てられているかを確認することができます。それぞれのドライブを選択し、ドライブレターを変更することも可能です。
しかし、ドライブレターに使用できる文字には制限があります。アルファベットのAからZまでの26文字しか使用できません。また、既に割り当てられている文字は使用できないようになっています。
さらに、ドライブレターを変更することによって、これまで動作していたプログラムが正常に動作しなくなる場合があります。特に「Cドライブ」はPCを動かすために必要なプログラムが入っている部分で、ドライブレターを変更するとPCが動作しなくなる可能性があるため注意が必要です。
ドライブレターは、PCに接続される記憶媒体一つずつにそれぞれ自動的に振り分けられるものですが、例外もあります。それは「パーティション」と呼ばれる領域と、「RAID」と呼ばれる環境です。
パーティションとは、ハードディスクの容量を分割することを意味します。分割されたそれぞれの領域のこともパーティションと呼ばれます。ハードディスクは1台しか搭載されていないのに、コンピューターに「Cドライブ」と「Dドライブ」の2つのハードディスクが表示されている場合があります。これは、1台のハードディスクのデータ領域を論理的に2つのドライブに見せかけている状態です。この場合、ドライブレターはそれぞれのパーティションに別々に割り当てられます。
パーティションは別々のファイルシステムにすることが可能です。Mac用のHFS+フォーマットのパーティションと、Windows用のNTFSフォーマットのパーティションを1台のハードディスクに混在させることで、1台のPCでWindowsとMacの両方を動作させることも可能なのです。
また、PCを動作させるために必要なOSが保存されたパーティションと、ユーザーが作成したデータを保存するパーティションを分けることもできます。この場合、OS起動用のパーティション情報が壊れても、データ用のパーティションは無事というケースもあります。
パーティションはハードディスクの領域を分割するものでしたが、逆に複数のハードディスクを1つのドライブに見せかけて運用するものがRAID(レイド)です。RAIDとは、ハードディスクドライブを複数組み合わせ、大容量化、冗長性を確保することを目的として考案された技術です。データの読み書きを複数のドライブに同時に振り分けて行うことにより、読み書きの高速化にも効果があります。2台以上のハードディスクを使用し、あたかも1台のドライブのように運用するので、ハードディスクがたくさん繋がっていても、PC上では1台しか繋がっていないように見えます。パーティションの場合とは逆に、こちらは複数のハードディスクにまとめて一つのドライブレターが割り当てられます。
RAID構成のパソコンは、古くから企業向けに販売されていました。主にサーバー用に使われており、データの保守性を高めることや、障害発生時に速やかに環境を回復させたり、データを復旧することを目的としており、様々なサーバーに使われています。最近では、NASをはじめとした一般家庭向けのハードディスクにもRAIDが採用された製品が販売されるようになってきました。
RAIDについては別ページでも詳しく解説しておりますのでご覧ください。
ところで、ドライブレターはなぜ「Aドライブ」ではなく「C」から始まるのでしょうか。
ドライブレターが考案されたころのPC本体には、データを保存する機器は内蔵されていませんでした。必要なデータはフロッピーディスクから読み取り、データの保存もフロッピーディスクに行うといった方式だったのです。最初はフロッピーディスクドライブは1台だけでしたが、後にフロッピーディスクドライブが2台搭載されるようになりました。そのため、Windowsの前身OSであるMS-DOSでは、それぞれのフロッピーディスクドライブを区別するために「A」と「B」というドライブレターが割り当てられるようになりました。その後、ハードディスクを記憶媒体として搭載するPCが開発され内蔵ハードディスクには「Cドライブ」が割り当てられたのです。これが、ドライブレターが「C」から始まる理由です。
現在はフロッピーディスクドライブ自体が搭載されなくなったので、「Aドライブ」や「Bドライブ」は空いた状態になっています。そのため、設定で割り当てればユーザーがドライブレターに「A」や「B」を使用することも可能となっています。
しかし前述したとおり、ドライブレターを変更することによって、それまで動作していたアプリケーションやPCそのものが動作不良を起こす可能性があり、正常起動しなくなったPCからのデータ復旧をご依頼いただくこともあります。そのため、安易にドライブレターを変更するのではなく、事前に外付けHDDなどにPCのバックアップを行ったうえで変更することをお勧めいたします。