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Vol.39半導体メモリについて|データ復旧

半導体メモリについて

今回は、パソコンやスマートフォンにはなくてはならない「半導体メモリ」について解説します。
半導体メモリは、電気を通す「導体」(良導体)と、電気を通さない「絶縁体」の中間的な抵抗率を持つ、「半導体」と呼ばれる物質の特性を利用してつくられます。パソコンやタブレット、スマートフォンの主記憶装置は、大半がこの半導体メモリを使用しています。

半導体の歴史

現在の半導体は「トランジスタ」と呼ばれる半導体素子が基礎となっています。トランジスタが生まれる前は、多くの真空管を組み合わせて巨大なコンピュータが作られていました。
1947年にアメリカのベル研究所で初期のトランジスタが発明され、翌1948年にトランジスタという名前が付けられました。それまでは真空管を利用していたラジオがトランジスタを使用して作られるようになるなど、トランジスタの発明を機に半導体産業は大きく伸長しました。

写真:1947年にアメリカのベル研究所で発明された初期のトランジスタ

さらに、1959年には複数のトランジスタを一つのチップにまとめたIC(集積回路)が発明され、半導体産業はより拡大しました。ICはそれまでの半導体よりもはるかに小型化、軽量化が可能だったため、さまざまな電気製品で幅広く使われるようになり、1967年には電子式卓上計算機(電卓)が登場しました。その後は日本国内でも電子機器メーカーが相次いで電卓を発表し熾烈な「電卓戦争」が展開されました。

その後、ICの集積度は一段と進み、より小さな部品でさらに高機能化させることができるようになっていきました。ICはより多くのトランジスタを搭載したLSI(大規模集積回路)へと進化を遂げ、ICに搭載されるトランジスタ数は指数関数的に増えていきます。1980年代には100万個、1990年代には1000万個のトランジスタが搭載されるようになり、現在では数百億個となっています。このトランジスタ数の爆発的な増え方は、「およそ1.5年ごとに集積回路上のトランジスタ数が倍になる」といわれていて、半導体素子メーカーのインテルの創業者の一人であるマイケル・ムーアの名前を取って「ムーアの法則」とよばれています。

2000年代に入ると、多数の機能を1個のチップ上に集積した、超多機能な「システムLSI」の生産が本格化していきます。ICの高機能化、多機能化が進むことで、電卓やデジタル時計などの機器以外にも、エアコンや炊飯器のセンサー、パソコンやゲーム機、スマートフォンなどのさまざまな機器に使用されるようになり、現在では私たちの生活になくてはならないものとなっています。

写真:多数の機能を1個のチップ上に集積した、超多機能な「システムLSI」

半導体メモリとは

半導体はパソコンに搭載されているあらゆる部品に使用されていますが、今回は記憶メディアであるメモリに注目します。
一般的なパソコンの主記憶装置として搭載されているメインメモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ/ラム)と呼ばれます。

メモリには揮発性と不揮発性のものがあり、揮発性メモリは一旦電源を切ると保存情報が失われます。一方の不揮発性メモリは電源を切っても記憶情報が保持されますが、書き換え動作にともなって内部の絶縁層が劣化していくため、書き換え可能回数には上限があるとされています。
RAMは高速にアクセスが可能なので、プログラムがHDDやSSDにあるデータを扱う際は、一度RAM内にデータを置いたうえで処理します。しかし、RAMは揮発性メモリなので、電源を切ると保存されていたデータは失われることになります。たとえば、Wordファイルを上書き保存せずに編集している途中でパソコンの電源を切ると、編集中の情報が失われることになります。

写真:RAM

RAMにも種類があり、代表的なものにDRAMとSRAMがあります。
DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ・ディーラム)は、一定時間経つと自然放電によりデータが消えてしまうため、定期的に情報を読み出し、再度書き込みをするといった動作が必要です。この動作をリフレッシュと呼び、記憶を保持するために1秒間に数十回の頻度で繰り返しリフレッシュが行われます。こうした特性により、DRAMは後述のSRAMよりも動作は遅くなりますが、構造が単純なため容量あたりのコストが低いという特徴があります。

これに対してSRAM(スタティックランダムアクセスメモリ・エスラム)はリフレッシュを行う必要がなく、DRAMよりも高速で動作させることができ、消費電力も低く抑えられます。しかしその分構造が複雑になり、DRAMに比べて容量当たりのコストが高くなる傾向にあります。一般的にDRAMは数GBの容量がありますが、SRAMは数KBから数MB程度の製品がほとんどです。そのため、一般的なパソコンのメインメモリとして使用されることはなく、CPUに内蔵されたキャッシュメモリなどに使用されています。

一般的な半導体メモリは大半が揮発性のため、パソコン内のユーザデータを保存するための記憶メディアとして使用されることはありませんでした。しかし、近年はフラッシュメモリという不揮発性のメモリが普及しています。フラッシュメモリの用途として代表的なものは、USBメモリやSDカードなどの記録媒体です。HDDとは異なり、フラッシュメモリは可動部分がなく振動に強いという特性があり、パソコンの記録媒体のSSD(Solid State Drive)や、スマートフォン・デジタルビデオカメラの内蔵メモリとしても使用されています。

RAMとROMの違い

さて、ここまではRAMについて紹介をしましたが、RAMと似たような名前の「ROM」をご存知でしょうか。

ROM(Read Only Memory・ロム)とは、その名の通りデータの読み出しだけが可能なメモリです。電源を切るとデータが失われてしまう揮発性のRAMに対して、こちらは電源を切ってもデータが失われることのない不揮発性メモリです。Read Onlyの名前のとおり読み出し専用なので、新たにデータを書き込むことはできません。パソコンのCPUにBIOS(Basic Input Output System、バイオス)やファームウェアといった情報を保存し、動作の際に必要に応じて読み出すために使用されています。

また、ゲーム機のソフトを格納するメディアとして利用されるケースもあります。1980年代に大ヒットした任天堂のファミリーコンピュータのソフトは、「ROMカートリッジ」や「ROMカセット」と呼ばれていました。パソコンソフトなど、データ入りで販売されているCDメディアも「CD-ROM」と呼ばれています。

写真:ROM

ところで、このROMという表記を他に身近な場所で目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
スマートフォンのスペック表の記述に「RAM」「ROM」と併記されているケースがよく見受けられます。国内の大手通信キャリアのウェブサイトではスマートフォン各機種のスペックが公開されていますが、そのメモリの項目の中にRAMとROMの項目があることが多いです。RAMはメインメモリの容量を、スペック表の中でのROMは内蔵フラッシュメモリの容量を表しています。

図表:スマートフォンのスペック表。内臓メモリにRAMとROMの記述がある。

フラッシュメモリは当然書き換え可能な記録装置なのでROMではありません。こういった記述は日本国内における独自表記のようです。海外で販売されているスマートフォンの場合は「Internal Memory Storage」(内蔵メモリストレージ)と表記されています。なぜ日本国内でだけこのような誤った表記が定着してしまったのか、理由は定かではありません。

NORとNAND

フラッシュメモリには、代表的な種別としてNAND型(ナンドがた)とNOR型(ノアがた)という二つの種類があります。
NAND型メモリは低価格・大容量が特徴で、USBメモリやSSD、スマートフォンの内蔵メモリなどに利用されています。NOR型メモリは読み出しが高速で信頼性が高く、主にファームウェアの格納に使用され、ルーターやプリンター、デジタルカメラ、GPSなどの高い信頼性を求められる機器の基板上に搭載されています。

NAND型の特徴は、NOR型よりも書き込み速度が高速であることと、高集積化がしやすいことです。高集積化とは、一つのチップ上に何層ものメモリーセルを搭載し、より小さなチップで大容量化することを指します。現在は市場の拡大と容量単価の下落が相乗し、記憶メディアの代表格ともいえるハードディスクとシェアを競合するまでになっています。

しかしNAND型のもう一つの特徴に、書き換え回数の制限があります。データを保存するたびに内部の絶縁層が劣化していくため、データを書き換えることのできる回数には制限があるのです。ただし、特定のブロックに読み書きが集中してしまうことを防ぐために、ウェアレベリングと呼ばれる手法で読み書きを平均化し寿命を延ばすといった工夫もされているので、日常的に使用するうちに書き換え上限に達することはありません。

一方のNOR型の特徴は、NAND型よりも読み出しが高速なことと、NAND型に比べて高集積化に適さないという点があります。しかし、NAND型と比べて信頼性が高いためデータ保存先ではなく、ファームウェアの格納場所として機器の基板に内蔵された状態で利用されるケースが多いです。

半導体メモリの新技術

2017年5月に、CPUメーカーであるIntelが「Intel Persistent Memory」(インテル・パシスタント・メモリ)を発表しました。これまでパソコンのメインメモリ は揮発性メモリでしたが、それが不揮発性のものに置き換えられるという画期的なものです。Intelとマイクロン・テクノロジーが共同で開発した3D XPointという技術を用いて開発されています。

このメモリはDRAMのようにデータの保持に電力を必要としないため、パソコンの電源を切っても保存されたデータはなくなりません。また、3D XPointによるメモリはこれまでのDRAMよりも容量当たりの単価が安く済むといわれており、大容量のメインメモリを搭載することも容易になります。そうなると、パソコンのメインメモリとHDD(SSD)の両方を兼ね備えた機能を持たせることが可能になります。そのため、パソコン上の処理速度の足かせになっていた「ストレージにデータを保存する処理」が必要なくなり、パソコンの動作が高速化されると見込まれています。

このIntel Persistent Memoryは現在まだ開発中のようですが、2018年度には登場する予定との見方もあるようです。将来は、ハードディスクやSSDなどのストレージメディアを搭載しないパソコンが登場するかもしれませんね。

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