パソコンでインターネットを見る際に使用するソフトのことを「ウェブブラウザ」と呼びます。インターネット上でホームページを公開する仕組みをWWW(ワールドワイドウェブ)と呼びますが、それをブラウズ(閲覧)することから、ウェブブラウザという名前が付けられました。ウェブブラウザだと長いので、単にブラウザと呼ばれることもあります。ブラウザは、マイクロソフトのインターネットエクスプローラ(IE)や、GoogleのChromeなどが有名です。
スマートフォンにもブラウザは搭載されており、iOS(iPhone/iPad)だと標準でSafari、Androidは「ブラウザ」というそのままの名前のソフトが搭載されています。iOS、Androidともに、Chromeなどの標準搭載以外のブラウザをインストールすることも可能です。
WWW自体が生まれたのは1990年代初頭で、ブラウザの歴史もそのころから始まります。最初のブラウザは名称が技術名と同じ「WWW」で、画像は扱えず、文字だけの文章同士をリクでたどりながら閲覧できるソフトでした。
1992年には画像も扱えるようになったブラウザ「モザイク」が登場します。このころにはWWWの技術や、モザイクは無償で公開されたため、世界的に普及するようになりました。
1994年にはモザイクコミュニケーションズ社がモザイクの後継ソフトを開発します。当初のソフト名は「Mozilla(モジラ)」で「モザイクを打ち倒すゴジラのようなモンスター」という意味を持たせています。実際の製品名はMozillaではなく「ネットスケープナビゲータ」となり、会社名もネットスケープコミュニケーションズに改められました。当時としては高機能で使いやすかったため、世界シェアは9割を超えていたといわれています。現在ではブラウザは無料なのが当たり前でしたが、この当時はネットスケープナビゲータのパッケージがパソコンショップでも販売されていました。
Windows95が登場して、インターネットエクスプローラ(IE)が誕生します。初代IEは、Windows95には標準搭載されず、拡張ソフト集「Plus! for Windows 95」に収録されていました。IE 1やIE 2は非常に低性能でしたが、IE 3はそれなりに動作するようになったうえに、Windows95の後記バージョンに同梱されるようになり、シェアを拡大していきます。
このころはネットスケープとIEが激しくシェア争いをしていて、「ブラウザ戦争」とまでいわれました。シェアは低いもののOperaなどのブラウザもこのころ登場しています。各ブラウザは、新しい技術を次々と導入していて、JavaScriptなどの現在のウェブ上の技術の基礎はこのころ作られたものです。
現在のブラウザは、表示に差異が出ないようにする”標準化”が重視されますが、当時は各ブラウザが独自に新技術を投入していたため、IEでは表示されても、ネットスケープでは正しく表示されないページや、その逆のページが存在していました。どちらかというと、ネットスケープのほうが厳密にページの記述を解釈するようになっていて、ページの作者が記述ミスをしていたときにネットスケープでは表示されないことがありました。IEのほうが柔軟に対応していて多少記述に間違いがあっても表示される傾向がありました。そのため、IEで見られるページのほうが多く、人気が高まってシェアを奪っていくことになりました。
さらに決定的だったのはWindows98とIE 4が統合されたことです。その結果、IEのシェアが急増。2000年にはブラウザ戦争が事実上終結したといわれました。このころにはMacOSでもIEが標準ブラウザとなっています。IEが安定したシェアを手に入れたことからIE 6以降、長い間バージョンアップが行われず、新技術が投入されなくなります。
IEにシェアを奪われている間、ネットスケープは1998年にプログラムのソースコード(設計図)を公開し、世界中の開発者が開発に参加できるようにしました。開発は非営利団体のMozilla Organization(モジラ・オーガニゼーション)が引き継ぎました。その後、Mozilla Foundationが設立され、2004年に新ブラウザMozilla Firefoxが誕生します。
この時期にGoogleはGoogleマップやGmailなど、ブラウザ上で動くプログラムを提供し始め、ブラウザが単なるホームページ閲覧ソフトではなく、ビジネスにも使えて、OSに依存しない新たなプラットフォームとして育ってきました。
2009年にはそのGoogleがChromeをリリース、さらにAppleがIEを捨てて独自のSafariをリリース、Windows版も提供を始めます。こうして再びブラウザのシェア争いが始まり、俗に第二次ブラウザ戦争とよばれています。
ネットスケープとIEが争っていた第一次ブラウザ戦争の時代とは異なり、標準化技術によりどのブラウザでも同じようにページが表示されるようになったため、シェアは拮抗したままの状態となりました。 第一次ブラウザ戦争のときのIEのような圧倒的な勝者は生まれませんでしたが、IEの独占状態を崩したことで第二次ブラウザ戦争は終結しました。
2013年ごろには、Googleのサービスとの親和性の高さから、Chromeの普及が進み、ついにIEのシェアを超えて世界シェアトップに立ちます。それに対し、マイクロソフトはWindows10のリリースに伴い、IEの開発を終了し、新ブラウザEdgeをリリースしました。さらに、主要ブラウザ以外にも数々の新しいブラウザが登場します。
このあたりから第三次ブラウザ戦争とよばれるようになりました。
この数年はChromeが首位のままで、IE+EdgeとFirefoxがそれに続く状態が続いています。パソコンの性能が低かったころは、ブラウザによって動作の軽さが違っていましたが、現在のパソコンではブラウザごとの差異は小さく、HTML5をはじめとした標準が技術で表示内容の差もなくなり、ブラウザの使い勝手もあまり差がないため、今後しばらくはシェアが大きく変動することはないとみられています。
ところで、ブラウザ戦争の裏で、ひっそりと姿を消そうとしているソフトがあります。Adobe社のFlashです。ブラウザでは表現できないアニメーションなどを表示するためにブラウザに追加されるアドオンソフトで、Flashに対応していればどのブラウザでも同じように表示されるメリットがありました。
しかし、ブラウザの脆弱性対策だけではなくFlashの脆弱性対策も必要となるため、OSの開発者側からは煙たがられる存在となっていました。iPhoneに搭載されたSafariでは最初からFlash非対応となり、大きなシェアを握るiPhoneで表示されないFlashは次第に使われなくなっていきます。
また、第三次ブラウザ戦争のころからHTML5という技術が投入され、ブラウザだけでもアニメーションや動画をふんだんに使ったインタラクティブな表現がプラグインなしで可能になってきたため、PC用ブラウザでもFlash排除の動きが強くなり、今後はFlashを使うページは消えていくと思われます。
インターネットエクスプローラで良く訪問するページをお気に入り(ブックマーク)されている方も多いと思いますが、データレスキューセンターではパソコンが故障した際の、IEのお気に入りデータの復旧にも対応しています。
Firefoxの場合、事前にエクスポートをしておかないとデータをインポートできないので注意が必要です。
また、Chromeの場合はGoogleアカウントでログインしていればGoogleのサーバ上にブックマークデータが保管されるので、バックアップは必要なく、ChromeにGoogleアカウントでログインするだけでデータを復旧することができます。